トランプ狙った「暗殺未遂犯」の正体

米大統領選の投票まで50日となった9月15日の日曜日、米フロリダ州ウェストパームビーチのトランプインターナショナルゴルフクラブのコースで、共和党大統領候補ドナルド・トランプ前大統領を狙った2度目の暗殺未遂事件が起きました。

コース外周のフェンスのそばでライフル銃を持った男が見つかったのです。そして車で逃走した男はその後、逮捕されました。

 トランプ氏は7月13日にもペンシルベニア州での選挙集会中、狙撃されています。今回は未遂でしたが、それに続く2度目の狙撃の危機になりました。

 米連邦捜査局(FBI)が暗殺未遂事件で取り調べているハワイ在住のライアン・ルース容疑者(58)は、キーウで外国人志願兵を募集していた人物でした。

ライアン・ルース容疑者は外国からウクライナにやって来る志願者のリクルーターでした。時と場合、場所によって任務は戦闘、食料や水の搬送など戦闘地域での人道支援に分かれます。ルースはこれまでに外国人志願兵として50人から60人ぐらいをリクルートしたといっていました。当時マスコミ取材に日の丸に5人と書かれているが、と確かめると、「3人をリクルートした」とだけ答えていました。

そのうちの1人は現在もウクライナ北部ハルキウに滞在、「フミ・カフエ」を運営し、毎日約1000人に無償で食事を提供している土子文則さん(75)です。

トランプ氏はバイデン政権によるウクライナへの財政・軍事支援を批判し「大統領に返り咲いたら、ウクライナ戦争を24時間以内に片付ける」と米国の支援を大幅に削る考えを示しています。ライアン・ルースはウラジーミル・プーチン露大統領に近いと言われるトランプ氏をなぜ消そうとしたのでしょうか。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、ライアン・ルースはトランプ氏から350メートル以上離れたコース外周フェンスそばの植え込みに潜んでいました。発見したシークレットサービスが発砲したため、黒の日産車で逃走しました。

 スコープ付き半自動小銃AK-47、フェンスに掛けられた2つのバックパック、セラミックタイルでつくった防護ベスト、GoProカメラが残され見つかりました。友人の不動産投資家とゴルフを楽しんでいたトランプ氏は事件後「私たちを阻止するために手段を選ばない人たちがこの世には存在する」と資金調達メールを送信しました。

 英大衆紙デーリー・メールによると、ライアン・ルース容疑者は逮捕された際も落ち着いていて感情的ではなかったという事です。ライアン・ルース容疑者は民主党員として登録されています。2002年には大量殺傷兵器を所持していたとして有罪判決を受けています。

 閉鎖されたX(旧ツイッター)のアカウントをもとに同紙は、ライアン・ルース容疑者は16年大統領選ではトランプ氏に投票、20年には民主党予備選でトゥルシー・ギャバード氏を支持、今回は共和党予備選でニッキー・ヘイリー、ヴィヴェック・ラマスワミ両氏に協力するよう求めたと報じています。

 2020年には民主党のギャバード、エリザベス・ウォーレン、トム・ステイヤー、アンドリュー・ヤン各氏に献金しています。同年5月に起きたジョージ・フロイド氏の警官暴行死事件では「BlackLivesMatter」「AllLivesMatter」のハッシュタグを用い“警察たたき”のレトリックを展開していました。

2020年6月、トランプ氏に宛て「あなたが私の選択だった時、私や世界はあなたがより良い人物であることを期待していた。しかし私たちは皆、大きな失望を味わった。あなたはますます悪化し退化しているように見える。あなたが消えてくれたらうれしいのだが……」とSNSに投稿していました。

ライアン・ルース容疑者の家族は「父は暴力的な人間ではなく、銃を所有しているとも思っていなかった。常識ある人なら誰でもそうであるように父はトランプ氏を嫌っている。私もトランプ氏は好きではない」と語っています。家族は、ライアン・ルース容疑者がハワイにいると思っていたという事です。

「マイダン革命」の舞台になったキーウのウクライナ独立記念碑のそばに世界52カ国の国旗と「世界には50億人の成人がいるのにウクライナでロシア軍と戦う外国人兵士はわずか5000人」と書かれたビラが貼られていました。

ライアン・ルース容疑者自身、前線で戦うつもりでウクライナにやって来たと伝えられています。当初ライアン・ルース容疑者は外国人志願兵をバンに乗せ2つの基地を回る予定でした。しかし軍隊経験がないことや年齢を理由に断られ、キーウでリクルート活動を行っていました。その日、米国、英国、ドイツ、スイスの4人が集まりました。

 ライアン・ルース容疑者と4人は欧州連合(EU)加盟国のナンバープレートがついた支援活動用バンに乗り活動していました。

 ライアン・ルース容疑者は「各国政府は自国民がウクライナで戦うのを望まない。プーチンはウクライナのために戦う外国人志願兵に4万ユーロの懸賞金をかけている。私のような民間人は2万ユーロだ」

「だから自分のことを話さないし、人目に触れるのを嫌うんだ。秘密を保っている。みんな殺されたくないからね。私も米国に帰ればロシアマフィアに殺される恐れがある。世界の指導者はウクライナに軍隊を送らない。プーチンが核兵器を持っているから恐れているんだ」

「私の仕事は世界中の国から10万人を集めて戦わせることだ。この戦争に勝つためには10万人、いや20万人、30万人が必要だ。5000~6000人ではこの戦争に勝つことはできない。これは白か黒か、善か悪かの戦いだ」

「善の側に立つのか、それとも悪の側に立つのか。善のために戦いたければキーウの独立記念碑のそばに座っているライアンを訪ねてくるだけでいい。すぐに前線に連れていってあげるよ」と語っていたことが伝えられています。その後、ウクライナを後にしていました。

 自由と民主主義国家で暗殺は絶対に許されるものではありません。しかし「トランプ大統領返り咲き」でロシアがウクライナに勝利した形で戦争が終結するのをライアン・ルース容疑者は受け入れることができなかったのだと思われます。しかし真相解明はFBIの捜査を待つほかありません。